オンライン資格確認を導入するメリットとは?
執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
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「オンライン資格確認を導入してみたけれど、今一つメリットがわからないんだよね」
このように、オンライン資格確認について気になっている先生も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、オンライン資格確認を医療機関に導入するメリットや活用方法について紹介します。
オンライン資格確認を導入してみたものの活用方法がよくわからないという先生や、オンライン資格確認のメリットがわからないという先生はぜひ参考にしてください。
オンライン資格確認とは?
令和5年(2023年)から医療機関や薬局において、「オンライン資格確認」が原則義務付けられるようになりました。
原則義務化されたこともあり、オンライン資格確認を「とりあえず」導入した先生も多いのではないでしょうか。
では、実際にオンライン資格確認はどのようなシステムなのでしょうか。
まずは、オンライン資格確認の概要について解説していきます。
オンライン資格確認について
オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで瞬時に資格情報の確認ができることをいいます。
従来の資格確認の方法は、患者の健康保険証を受け取り、記号・番号・⽒名・⽣年⽉⽇・住所などを医療機関側がレセコンシステムに入力する、というものでした。
この方法では「入力の手間がかかる」「患者さんを待たせてしまう」「入力作業にミスがあり、レセプト請求できない」などの欠点がありました。
また、退職、転居などで資格が失効している保険証を患者さんが提示した場合、医療機関・薬局が保険証の発行元(保険者)に医療費の一部を請求しても、医療機関への支払いが行われないという問題がありました。
このような問題を解決するために「オンライン資格確認」の運用が始まったのです。
オンライン資格確認の導入状況について
厚生労働省によれば、令和6年4月28日現在で、オンライン資格確認の導入状況は90.3%です。
今後の厚生労働省の施策は、オンライン資格確認を導入している前提で進んでいくと考えられます。
オンライン資格確認のメリット
オンライン資格確認は、ほとんどの医療機関で導入されていることがわかりました。
では、オンライン資格確認にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
保険情報の入力作業が軽減される
オンライン資格確認はマイナンバーカードによる受付に対応しています。
マイナンバーカードは現在保険証との紐付けが進んでいます。
受付のオンライン資格確認端末でマイナンバーカードを読み込ませることで、最新の保険資格を自動的に取り込めるようになっています。
従来の受付では、保険証を提示してもらい、患者情報や保険情報など多くの項目の⼊⼒が必要でした。
マイナンバーカードでのオンライン資格確認の場合、資格情報を取り込むことで入力事務作業の手間を減らすことができます。
オンライン資格確認導入による保険情報入力作業のイメージ
(厚生労働省資料より引用)
資格確認だけでなく、医療情報も確認できる
患者さん本人が、マイナンバーカードによる本人確認をした上で同意した場合に限られますが、オンライン資格確認は保険資格の確認だけでなく個人の医療情報を確認できることもメリットの一つです。
患者さん本人が同意した場合、以下のような医療情報を確認することができます。
- 薬剤服用歴
- 特定健診情報
- 他の医療機関での診療情報
なお、災害時は患者さん本人の同意がなくても医療情報を確認できるため、オンライン資格確認は災害医療にも貢献するシステムといえるのではないでしょうか。
オンライン資格確認の医療情報利用イメージ
(厚生労働省資料より引用)
保険証の有効性を担保できる
オンライン資格確認を導入することで、患者さん本人の保険資格が有効であるかどうか即時確認できるようになります。
今までは受付で患者さんに無効になっている保険証を提示されても、その場で有効性を担保できないことが問題になっていました。
後日、資格喪失によるレセプト返戻があると、医療機関側から被保険者や保険者に確認しなければなりませんし、連絡がつかず再請求が不可能になることも覚悟しなければなりませんでした。
オンライン資格確認では、その場で保険証の有効性が担保できるため、資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務の負担軽減が期待できます。
オンライン資格確認の導入で医療情報取得加算を算定できる
オンライン資格確認を導入し、稼働させることで医療情報取得加算を算定することができます。
【初診時】
医療情報取得加算1‧‧‧3点(月1回)
医療情報取得加算2‧‧‧1点(月1回)
【再診時】
医療情報取得加算3‧‧‧2点(3月に1回)
医療情報取得加算4‧‧‧1点(3月に1回)
(厚生労働省保険局医療課資料「令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】」より)
高い点数というわけではありませんが、オンライン資格確認を導入するだけで算定できる点数のため、医院経営においてもオンライン資格確認の導入はマストといえるのではないでしょうか。
オンライン資格確認のデメリット
ここまで、オンライン資格確認のメリットを紹介してきました。
保険資格の確認だけでなく、医療情報を確認したり、診療点数も高くすることができるため、多くのメリットがあるといえるでしょう。
では、導入することによるデメリットにはどのようなことが考えられるでしょうか。
導入するのに費用がかかる
オンライン資格確認の導入における最大のデメリットは、費用がかかるという点でしょう。
オンライン資格確認を導入する上で、以下のような機器が必要となります。
- 資格確認用のパソコン
- 電子カルテシステム
- カードリーダー
- 有線LAN回線もしくはWi-Fiなどのインターネット回線の整備
ネット回線の整備をしていないような医療機関はネット環境の整備が必要となりますし、毎月のランニングコストがかかることになります。場合によっては経営を圧迫する可能性もあるでしょう。
患者さんがオンライン資格確認端末の使い方にとまどうことがある
医療機関を受診する患者さんは高齢者が多く、電子機器の扱いに不慣れな方も多いため、カードリーダーの使い方にとまどうことがあります。
導入当初は問い合わせや機器操作のレクチャー業務が多くなり、スタッフに負担がかかります。
しかし、カードリーダーは顔認証にも対応しており、慣れたら手際よくこなせる方がほとんどです。
国の掲げる医療DX政策の一つとして、オンライン資格確認は原則義務化されており、実際多くの医療機関ではすでに導入されています。
まだ導入していない先生は、ぜひオンライン資格確認の導入を検討してください。
オンライン資格確認の活用方法
オンライン資格確認をなんとなく流れで導入はしてみたけれど、活用メリットがよくわからないという先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、オンライン資格確認を導入しているが、結局患者さんからはマイナンバーカードではなく、保険証を提示してもらっているという医療機関も多いようです。
ここからは、オンライン資格確認の効果的な活用方法について解説します。
マイナンバーカードで診療情報や薬剤服用歴がわかる
オンライン資格確認でわかることは、保険情報だけではありません。
マイナンバーカードを持参した患者さん本人の同意があれば、他院での薬剤服用歴や、特定健診のデータなどの医療情報を取得できます。
他の医療機関での診療情報や薬剤服用歴、特定健診の検査データも確認できるため、より素早く、的確な診察を行うことが可能となるのです。
オンライン資格確認が利用できなかった場合、これらの医療情報は患者さんからの聞き取りや持参するお薬手帳を確認するなどの手間が必要になります。
このため、オンライン資格確認は診察においても重要な役割を発揮するといえるでしょう。
PHRの導入で将来的に医療情報の連携が期待できる
近年、クラウドやスマートフォン、タブレットなどのモバイルツール普及とあいまって、個人の医療・介護・健康データであるPHR (Personal Health Record)を本人の同意の下で様々なサービスに活用することが可能になってきています。
現在、各PHRメーカーがマイナンバーカードとの連携を進めています。PHRではさまざまなメーカーの血糖測定器やインスリンコネクテッドデバイス、血圧計や体重計とアプリ等を介してデータを同期できます。
医療機関側と患者さん側でコミュニケーションをとることも可能です。
将来的にマイナンバーカードとの連携が実現すれば、医療機関にとっても、患者さんにとっても非常に有益になります。
オンライン資格確認による医療情報に加えて、今からPHRを導入することで、患者さんの診察をより充実させることができるのではないでしょうか。
参考記事:PHRとは?選び方のポイントを徹底解説!
実際にPHRを導入することで、患者さんの治療に役立てている事例を紹介します。
参考記事:PHRは今の時代に合っていると思います
ともながクリニック糖尿病・生活習慣病センター院長 朝長修先生
まとめ
今回はオンライン資格確認を導入するメリットについて解説しました。
オンライン資格確認は、即時に保険証の有効性を担保できるだけでなく、医療情報を確認することができるため、非常に有効です。
医療DX政策の推進により、オンライン資格確認やPHRの活用は、これからの医療機関にとって必要不可欠なものとなっていくのではないでしょうか。
参考資料:
厚生労働省HP「オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)」
厚生労働省資料「マイナ保険証利用促進のための取組・支援策について」
厚生労働省HP「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」
厚生労働省資料「令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】」