集患・増患するための方法とは?~患者さんの満足度向上のコツ~
執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
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「クリニック開業したものの、当初の期待通りには集患できていないなあ」
「患者を増やすためにはどうしていけばよいだろうか」
こんな風に考える先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際に開業したものの、当初の予測よりも来院患者が少なかったりすると不安になりますよね。
しかし、ライバルとなるクリニックと差別化したり、患者満足度を上げるすることで、患者数を増やしていくことができるはずです。
今回の記事では、他のクリニックとの差別化、独自化を行なっていく方法を紹介していきます。
患者数を増やしていきたいと考える先生は、ぜひ参考にしてください。
目次
集患・増患を狙う上で大切なこと
医療機関で患者数を増やしていく上で大切なこととはなんでしょうか。
それは、このクリニックにまた来たいと思ってもらうことです。リピーターを増やせば、自ずと患者数も増えていくはずです。
ここでは、リピーターを増やすためにはどうすべきかを解説していきます。
マーケティングが全てではないことを理解しよう
よく、「集患」という言葉をイメージした場合、何かしら特別な施策が必要なのではないか、と考える先生が多いでしょう。
事実、「集患・増患」で検索すれば、ホームページやSEOなどのオンラインマーケティングやポスティング、雑誌広告などのオフラインマーケティングなどのマーケティングの話題がほとんどではないでしょうか。
これらのマーケティングは、新規にクリニックを開院するときは意識しておくべきですが、それだけでは不十分です。
事実、この記事を読んでくださっている先生も意識してマーケティング施策に取り組んだのではないでしょうか。
あなたのクリニックの患者数が伸び悩んでいるとしたら、マーケティング施策のみに終始してしまっているからかもしれません。集患・増患はマーケティングだけでは成立しないということを認識する必要があるのです。
集患・増患で一番大事なのは患者満足度を高めること
マーケティング施策を行った上で、一定数の患者さんが来院してくれたとしても、その患者さんが定着しなければ患者数の増加も一過性のものになってしまいます。
クリニックは、基本的に開院した地域に根差した経営を考えていく必要があります。
つまり、きちんと診療圏調査を行って競合クリニックが周りにいない場合、徹底的にマーケティングを行わなくても、ある程度の患者数は見込めるはずです。
この来院してくれた患者さんに満足してもらい、リピート率を高めることで患者数を2倍、3倍に加速度的に増やすことができます。集患・増患で一番重要視しなければならないのは、患者満足度を高めてリピート率を増やすことなのです。
患者満足度を高めるために必要なこと
では、実際に患者満足度を高めるにはどうすればよいのでしょうか。
そのためには、患者さんが医療機関にどのようなことを求めているかを把握しなければなりません。
厚生労働省の発表した「令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況」によれば、外来患者が医療機関を不満に思う原因で最も大きなものは、「診療までの待ち時間」となっており、24.1%の患者さんが待ち時間に不満を覚えています。
厚生労働省の同資料によれば、医師による診療内容や、医療機関スタッフの対応等に対する不満は5~6%に過ぎず、むしろ医療従事者の対応に関しては満足度が高いことがわかります。
ここからは、患者さんの待ち時間を減らす具体的な方法について紹介します。
待ち時間を減らす
上述した厚生労働省の調査結果から考察すれば、患者満足度を高めるためには診察までの待ち時間を減らす事が重要です。
診療までの待ち時間を減らすことができれば、患者さんの4人に1人が不満に思っていることを解消することができます。
では、実際に待ち時間を減らすにはどのような方法があるでしょうか。
効果的なのは、患者数の平準化と診療時間の短縮です。
患者数の平準化と診療時間の短縮を狙う上で、有効な施策として以下の3つが挙げられます。
①予約システムの導入
②定期通院患者の次回診察日程の調整
③Web問診
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
予約システムの導入
予約システムを導入で、クリニックを完全予約制もしくは予約優先制にし、時間帯ごとに細かく予約枠を設定することで患者数の平準化を進めることができます。
定期通院患者の次回診察日程の調整
定期的に診察に来るような患者さんに対しては、次回の診察日時を混んでいない時間帯ごとにへ誘導するなどの方法があります。
Web問診
来院前にクリニックのHPから問診票をダウンロードし記載してもらっておいたり、送信してもらうなどの手法で患者さん一人当たりにかかる診療時間を短くするという方法も効果的です。
混雑する時間帯の患者数を減らし、比較的空いている時間帯の患者数を増やし、時間帯患者数の平準化を行うことで、待ち時間を減らすことができるのです。
患者数の平準化は待ち時間の長さという不満を解消するだけではありません。
一度に大量の患者さんが来院した場合、急がなければならないという心理的状況が医師やその他医療スタッフの焦りをうみます。医療過誤などのミスにつながってしまいかねません。
また、十分な患者対応ができないことで、診察や患者対応への患者満足度の低下の原因となってしまいます。
患者数の平準化は診察やスタッフの患者対応への満足度を高めることにもなるのです。
正確な診療と説得力のあるアドバイス
さらに患者満足度を高めるためには、不満はないが、満足もしていないという、「どちらでもない層」に満足感を与える施策が必要です。
厚生労働省の「令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況」によれば、外来患者の項目別にみた満足度では、以下のような結果となっています。
※引用:厚生労働省 令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況
このように、医師の診察や医療従事者の対応に関しては概ね6割の患者さんが、満足していることがわかります。
しかし、裏を返せば残り4割は満足していないということです。
つまり、患者対応にしっかりと気を遣い、患者さんに満足してもらうことが出来れば、リピート率も高まります。そして、集患・増患につながるはずです。
患者さんの話にしっかり耳を傾け、丁寧に診察を行い、的確な治療を行うことが出来れば、患者さんも満足するのではないでしょうか。
焦って患者さんの診察を行うようなことになれば、それこそ患者さんの不満につながるでしょう。
患者数を平準化したうえで、真摯に患者さんに向き合うことが出来れば、診察の質も上げることができるはずです。
詳細なデータを見ながら指導することで、患者満足度向上につながる
診察の質を上げるという点で、シンクヘルスプラットフォームやシンクヘルスアプリなどのデジタルツールの活用は重要です。
シンクヘルスアプリは、日常の血糖値・血圧・体重・食事・運動などのデータを一括管理できるアプリです。
今まで患者さんの日常の健康状態の記録は血圧手帳などの紙媒体に患者さん自ら記録してもらうものでした。
これをアプリで一元管理することで、患者さんの負担を減らすことができます。
シンクヘルスアプリに対応している血糖測定器・体重計・血圧計などと機器連携すれば、データが自動で送信されるので、入力作業も不要です。
患者さんが通院する医療機関がシンクヘルスプラットフォームを導入していれば、この患者さんの健康データを医療機関でも確認することができるのです。
患者さんの日常データを医療機関でもチェックできるため、診察前から血圧や血糖値のデータを把握できるため、より的確な診断が行えます。
栄養指導や療養指導時に食事写真や運動記録などをみながら、患者さん個別のライフスタイルをより詳しく把握しながら個々にあったアドバイスもできます。
クリニックと患者さんとの双方向性コミュニケーション
糖尿病や高血圧などの慢性疾患の患者さんは定期的に受診してくれます。高齢化社会が進んでいくにつれて、慢性疾患の患者数も増えていくことが予想されます。
しかし、このような慢性疾患は自覚症状がない場合も多く、治療を続けることに不満を覚えたり、服薬治療へのモチベーションをなくす患者さんも多いでしょう。
中には通院を止めてしまう患者さんもいるかもしれません。
そこで注目されているのが、患者さんとクリニック側とを繋ぐ双方向型のコミュニケーションツールです。
シンクヘルスプラットフォームなどのPHRの中には、メッセージ機能を介して患者さんとクリニックとの双方向のコミュニケーションが遠隔でも実現できるサービスもあります。
患者さんは自宅にいながら医師などの医療従事者のアドバイスを受けることができますし、クリニック側も患者さんの病状をリアルタイムで把握できます。
患者さんとクリニック双方向のコミュニケーションを実現させることで、患者さんのモチベーションの維持やQOLの向上につなげることができます。
このようなドロップアウトを防ぐことも患者満足度を高める要因となりえます。
ただ漫然と定期的に診察を受けるクリニックよりも、患者満足度を高めることができるのではないでしょうか。
まとめ
今回の記事では、集患・増患について解説してきました。
集患・増患と聞けばマーケティング的な手法をイメージするかもしれませんが、それだけでは患者さんを永続的に増やしていく事はできません。
クリニックは地域に根ざした診療活動が基本となるため、患者満足度を高め、リピート率を増やしていくことが集患・増患につながります。
患者さんの不満の原因となる待ち時間の短縮を行った上で、診察や患者対応での満足度を高めていかなければなりません。
診察や患者対応の精度を高めるために、シンクヘルスプラットフォームなどのデジタルツールが有用です。
デジタルツールを活用することで、患者さんとクリニックの双方向性のコミュニケーションが容易になり、日々の治療効果を高めることができるはずです。
参考文献
厚生労働省参考資料「令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況」