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生活習慣病管理料を算定するための療養計画書の書き方のポイントとは?

執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください。

 

「生活習慣病管理料を算定するためには、療養計画書を作らないといけないけれど、書き方がよくわからない」

「初回と2回目以降で書式が違うんだけど、書き方のポイントってあるのかな」

このように、生活習慣病管理料を算定するうえで、療養計画書の作成に頭を悩ませている先生は多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、生活習慣病管理料における療養計画書の書き方について解説します。
生活習慣病の患者さんの治療に関わる先生は、ぜひ参考にして下さい。

療養計画書の記載内容とは?

生活習慣病管理料(Ⅰ)と生活習慣病管理料(Ⅱ)では、療養計画書の作成が必須です。

生活習慣病管理料については詳しく説明した記事がございますので、そちらを参照にして下さい。

関連記事:【令和6年度診療報酬改定】生活習慣病管理料(Ⅱ)の算定要件とは

 

療養計画書の記載すべき内容について、厚生労働省は以下のように定めています。

 

・対象患者に対して治療計画及び療養計画書を策定すること

・療養計画書は当該患者の治療管理において必要な項目のみで差し支えない

・療養計画書を基に患者へ治療計画の説明を行い、患者の署名による同意を得ること

・交付した療養計画書の写しは診療録に添付しておくこと

・保険者から特定保健指導を行う目的で情報提供の求めがある場合、患者の同意の有無を確認し療養計画書に記載し、同意を得ている場合には必要な協力を行うこと

・療養計画書の内容に、変更がない場合は療養計画書のこの限りではない。その場合においても、療養計画書について“患者又はその家族から求めがあった場合”、“概ね4か月に1回以上”は交付すること。

・患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書での記載事項を入力し、診療録にその記録及び患者の同意を得た旨を残している場合は、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす。

・血液検査結果を手交している場合、又は患者の求めに応じてその旨を患者サマリーに記載している場合は、療養計画書の血液検査項目についての記載は不要

 

※療養計画書のフォーマットはこちらをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1e_0002.pdf

 

このように記載内容は多岐にわたりますし、実際の記載内容も初回指導時と継続治療時では変わってきます。

次項では、生活習慣病管理料初回算定時と継続算定時での療養計画書の書き方のポイントについて解説します。

療養計画書初回用は目標設定を意識する

生活習慣病の療養計画書初回用は、疾病に対する理解と目標設定が重要になります。

療養計画書初回用の書式を確認し、その特徴について解説します。

療養計画書初回用の書式

以下は厚生労働省が公表している療養計画書初回用の書式です。

画像出典:厚生労働省HPより「生活習慣病療養計画書初回用書式」

 

達成目標や行動目標に関して、患者さんとしっかり相談したうえで作成していきます。

 

「重点を置く領域と指導項目」として、生活習慣に関する細かい目標設定が必要です。

適切な目標を設定するためには現状を正しく把握する必要があるため、食事や運動などの生活習慣を患者さんからしっかり聞き取りを行う必要があります。

療養計画書初回用の目的とは

療養計画書初回用の狙いは、患者さんが「検査結果を理解できること・自分の生活上の問題点を抽出し、目標を設定できること」です。

 

生活習慣病の患者さんに自らの病状についての知識をつけてもらい、日々の食事内容や運動習慣を見直すことで、治療効果を高めることが目的です。

血糖値や血圧、コレステロール値などの数値目標も設定していくことで、目標到達へのモチベーションを高めることもできます。

療養計画書継続用は目標再設定と行動変容を促す

療養計画書継続用では、初回で設定した目標に対するフィードバックを記載することになります。

次は療養計画書継続用の書式を確認し、その特徴を解説します。

療養計画書継続用の書式

以下は厚生労働省が公表している療養計画書継続用の書式です。

画像出典:厚生労働省HPより「生活習慣病療養計画書初回用書式」

 

生活習慣病療養計画書継続要は、目標達成の進捗状況を記載する欄が設けられていることが大きな違いです。

初回用と形式は似ているものの、目標達成の進捗状況を確認しながら患者さんにヒアリングする必要があることが分かります。

食事や運動等の生活習慣についても引き続きヒアリングが重視されており、設定した目標に関する評価を行い、場合によっては目標設定の見直しを行います。

療養計画書継続用の目的とは

療養計画書継続用の狙いは、患者さんが「重点目標の達成状況を理解できること・目標再設定と指導された生活習慣改善に取り組めること」です。

 療養計画書初回用で定めた目標に関して、達成状況を評価します。

 

数値目標を達成し、食事・運動などの生活習慣も目標を遵守できているようであれば、きちんと病状をコントロールできていると考えてよいでしょう。

前回の療養計画書から変更がない場合は、療養計画書は省略することもできます。(少なくとも4ヶ月に1回の交付でよい。)

 

もし、数値目標を達成できなかったり、策定した食事や運動の目標が達成できていなければ、患者さんと相談し、目標の再設定や生活習慣改善の指導を行いましょう。

PHRは療養計画書の作成に役立つ

療養計画書を作成するうえで、ぜひともおすすめしたいのがPHRの導入です。

 

療養計画書を作成するうえで、血糖値や血圧などの家庭での計測データは重要です。

 

PHRを導入することで、医療機関でも血糖値や血圧などのデータを確認できます。

また、日々の食事や運動などの生活習慣をPHRで記録することで療養計画書の作成に活用できます。

療養計画書の数値目標設定にはPHRが有用

療養計画書初回用、継続用の血糖値や血圧に関しては、日々の計測値をもとに数値目標を設定する必要があります。

 患者さんの血糖動態や血圧変動を知ることは、療養計画書の目標達成度の評価及び目標の再設定の指標となります。

 

ただし、糖尿病連携手帳や血圧手帳などに患者さんが記録する場合は、SMBGや血圧計で測った数値を自身で手書きにて記載しなければなりません。

そのため、記載するのを忘れてしまったり、転記する際に誤って記載してしまう場合もあります。

 

また、測定するたびに手帳に記載しなければならず、面倒に思ってしまい、数値管理に対するモチベーションが低下してしまうこともあるでしょう。

 

この問題を解決してくれるのがPHRです。

シンクヘルスなどの独立系のPHRアプリは様々なメーカーの血糖測定器やインスリンコネクテッドデバイス、血圧計や体重計とアプリを介してデータを同期できますので、転記ミスなどを防ぐことができます。

また、患者さんの状況を把握するためには、最大値や最小値、推移など、数値の傾向がわかることが重要です。

 

手書き記録では、数字の羅列となり、傾向や高血糖、低血糖などを見つけにくいですが、PHRを使用するとそのような分析データをすぐに閲覧することができるので、より目標設定や状況判断に活用しやすいという利点もあります。
 

患者さんが自宅で測定したデータを医療機関でも確認することができるので、療養計画書の数値目標の達成度や次回の目標設定をスムーズに行うことができるのです。

療養計画書の目標設定で必要となる多職種連携にもPHRが活用できる

指導計画書の作成が必要となる生活習慣病管理料(Ⅱ)の施設基準では、「治療計画に基づく総合的な治療管理は、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等の多職種と連携して実施することが望ましい。」とされています。

事実、指導計画書初回用と継続用のではそれぞれ、食事や運動などの生活習慣目標を設定し、評価する項目があります。

食事療法や運動療法には、看護師や管理栄養士や理学療法士などが関わりますし、処方薬の服薬指導では薬剤師が関わるでしょう。

 

シンクヘルスなど、PHRの種類によっては、日々の食事や運動を記録できるものもありますし、処方薬を記録できます。

これらのデータは医療機関でも共有できます。

同じ医療機関内で患者さんのデータを医師だけでなく、管理栄養士や看護師など他の医療従事者間でも共有できるのです。

 

結果として、PHRの導入で多職種連携がスムーズに実現できます。

PHRを導入することで、円滑なチーム医療につなげている事例がありますので、ぜひ参考にして下さい。

  

参考事例:チーム医療による糖尿病療養支援に活用しています 岡山済生会総合病院 内科・糖尿病センター 副センター長 利根淳仁先生

目標達成のための行動変容に役立つ

PHRで数値目標の評価や、目標の再設定に有用ですが、PHRのメリットはそれだけではありません。

シンクヘルスなどの一部のPHRでは、患者さんのPHRアプリと医療機関側のPHRサービスとでメッセージなどによる双方向のコミュニケーションも可能です。

食事や運動などの生活習慣について、患者さんと医療機関でコミュニケーションを取りながら治療を進めていくことができます。

双方向のコミュニケーションを行うことで、患者さんの治療へのモチベーションを維持し、行動変容へとつなげることもできるはずです。

 

また、療養計画書の糖尿病や高血圧を持つ方のライフスタイルを把握し、実現可能な食事療法や運動療法を提案することもできるでしょう。

PHRは、療養計画書のためだけでなく、患者さんの治療を進めていくうえで効果的なツールなのではないでしょうか。

まとめ

今回は、生活習慣病管理料を算定するうえで必須となる療養計画書の書き方について解説しました。

療養計画書は初回用も継続用も血糖値や血圧、血液検査の数値などの医療データを記入します。また、食事、運動などの生活習慣を記載し、治療目標を設定するという役割があります。

 

この数値目標と生活習慣の目標を設定し、評価していくうえで、PHRの活用は大きなメリットです。

PHRは数値データを患者さんと共有できるだけでなく、食事内容や運動の内容も共有できます。メッセージ機能によるコミュニケーションで、患者さんのモチベーションを維持し、計画に基づいた生活習慣の改善を期待できます。

患者さんの行動変容を促すことができるため、療養計画書の作成にぜひPHRを活用しましょう。

 

参考文献

令和6年度診療報酬改定の概要(厚生労働省資料):生活習慣病管理指導料の算定での療養計画書の役割について説明しています。

療養計画書書式(厚生労働省資料):厚生労働省が作成した療養計画書のひな形です。

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