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災害時、慢性疾患を持つ方に必要な備えとは

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執筆はライター下田 篤男(管理薬剤師・薬局経営コンサルタント)が担当しました。
*シンクヘルスブログ監修・執筆者情報一覧はこちらをご覧ください

 

「災害医療の知識はあるけど、災害が起こった時の慢性疾患を持つ方への対応はどうすべきだろう」
「災害が起こった時のために、慢性疾患を持つ方にはどのような備えをしてもらったらよいだろう」

 

このように、災害医療の知識は持っていても、災害時の慢性患者を持つ方への対応について、具体的にどうしたらよいかわからない方も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、災害医療と災害時の慢性疾患を持つ方への備えについて解説します。
近年は、日本でも地震だけでなく集中豪雨などによる災害も多発しています。

 

いつ身近で災害が起きても不思議ではありません。
普段、慢性疾患を持つ方の診察を行う先生は特に参考にしてください。

災害医療とは

災害医療とは、地震や台風、集中豪雨などの自然災害や、大規模火災などの大規模な事故、テロなどの災害が発生した時の医療体制をいいます。

 

ここからは、災害医療の役割や災害医療の中心となるDMATについて解説します。

災害医療の役割とは

災害医療は、医療の需要が供給よりも上回った状態で行われる医療となります。

過酷な状況での医療となるため、まず優先すべきなのは「救える命をできるだけ救う」ことです。

災害時は物資も人的資源も限られた中で医療を行わなければなりません。

 

また、避難所など慣れない環境の中で体調を崩し、災害で大怪我を負ったわけでもないのに、命を落とす災害関連死を防ぐことも災害医療の大きな役割といえるでしょう。

災害時に活躍するDMATとは

災害医療のうち、災害急性期医療を支えるのがDMATです。

DMAT(Disaster Medical Assistance Team、災害派遣医療チーム)とは、災害が発生して48時間以内の緊急時に適切な医療を行うことができます。

 

災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チームで、災害急性期に救える命をできるだけ救い、JMAT(Japan Medical Association Team 、日本医師会災害医療チーム)や被災地域の医療機関への橋渡しを行うチームです。

 

災害医療の中でも、災害が発生してから48時間以内の災害急性期は、医療資源も人的資源も限られた中で医療行為を行う必要があるのです。

 

このような特殊な状況下で、DMATは冷静に患者のトリアージ(選別)をしなければなりません。

トリアージでは、外傷などの診断だけでなく、患者の持参薬などの情報から持病をできるだけ正確に把握しておく必要があります。

災害現場や避難場所でのトリアージを元に治療を進めていくことになります。

慢性疾患を持つ方の災害時に必要な備えとは

ここまでは、災害医療について簡単に説明してきました。

特に災害発生から48時間以内の災害急性期医療ではDMATが対応します。

 

災害医療で問題となるのは、災害で負傷した方への対応だけではありません。

慢性疾患を持つ方への対応にも注意が必要です。

そこで、慢性疾患を持つ方に対して災害時にどのように対応すべきか、平常時にどのような準備をしておかなければならないかを解説していきます。

災害時に起こり得ることとは

災害時は、医療資源や人的資源が枯渇するだけではありません。医療機関そのものも被害を受け、医療行為ができなくなる場合もあるでしょう。

 

慢性疾患の方は、かかりつけの医療機関が被災してしまうと、診察してもらうことが難しくなるだけでなく、自身の治療薬を確保することができなくなる可能性があります。

 

降圧剤や血糖降下剤、不整脈治療薬を常用している方など、治療継続が必要な方にとっては自らの健康を維持することに不安を覚えるかもしれません。

医療機関で慢性疾患を持つ方にできること

では、医療機関で慢性疾患を持つ方にできることはどのようなことがあるでしょうか。

大切なのは、災害時でも治療が継続できるようにすることです。

 

医療機関で慢性疾患を持つ方にできることとしては、以下のような施策が有効です。

  • 常備薬として、次回の診察予定日よりも1週間ほど余分に定期薬を処方しておく。
  • 「お薬手帳」など、服用している薬がわかるように処方内容を記録したものを持ち歩くよう促す。
  • 定期薬や処方箋、お薬手帳などの写真を携帯電話等に残しておくよう促す。
  • 食品、医薬品などでアレルギー歴がある場合はその旨を記録しておくよう促す。

以上のような備えは、医療機関側と慢性疾患を持つ方側で、普段からコミュニケーションをとっておくことでスムーズに行うことができるでしょう。

 

定期薬を余分に手元に残るように設定しても、集中豪雨で浸水したり、地震で家屋が倒壊したりで持ち出せない場合も考えられます。

 

その様な際にお薬手帳などの処方薬のデータがあれば、避難場所や入院先の医療機関でも治療が継続できるかもしれません。

PHRは緊急時の対応に役立つ

ここまでで、慢性疾患を持つ方の災害時に必要な備えを解説してきました。

定期薬が余分に手元に残るようにしたり、お薬手帳などで定期薬を把握しておくなどの備えは確かに有効です。

 

しかし、お薬手帳を携帯していない時に被災した場合や、予備の定期薬が倒壊した自宅の中でとってこられないということなどは現実に起こってしまうかもしれません。

 

そこで注目されているのが、PHR(Personal Health Record、生涯型電子カルテ)です。

 

ここからは、PHRを災害医療にどう活かすのかを解説していきます。

PHRで普段から記録しておくことが大切

PHRは、個人の健康・医療に関する情報を一元的に統合管理したデータのことです。

 

PHRでは血糖、血圧、体重、服薬、食事や運動記録などの個人のライフログデータと医療機関から個人に提供される医療データなどを管理します。

ウェアラブル端末や家庭用測定器などから様々なバイタルデータを収集できるメリットがあり、自身のスマホで管理できます。

 

普段から自身の服薬情報などの医療情報を記録しておけば、いざ災害があった場合も医療サービスの継続が期待できるでしょう。

災害時でのPHRの活用方法

災害時に、お薬手帳や定期薬が持参できていなかったとしても、PHRアプリを慢性疾患を持つ方が活用していれば、自身の医療情報を的確に伝えることができます。

 

また、シンクヘルスのようなPHRアプリのデータを閲覧できるPHRサービスはクラウド型のものが多いため、災害時でもデータがクラウド上に安全に保管され、インターネットがつながればどこでも確認できます。

 

災害医療の現場でも有用であることは間違いありません。

 

PHRについて詳しく知りたい先生は、以下の記事を参考にしてください。

参考記事:PHR(パーソナルヘルスレコード)とは?医療機関での活用方法を解説!

まとめ

今回は、災害医療について解説してきました。

慢性疾患を持つ方は、被災時に自身の医療を継続できないという危険性に直面します。

慢性疾患を持つ方にとって、常日頃から災害への備えをしておくことは非常に重要です。

 

特に、災害時に問題となるのは、治療薬の確保です。

 

慢性腎不全の方やインスリンを自己注射することで血糖マネジメントを確保している方などは、災害時の治療継続の重要度が高いです。

もちろん、それ以外の慢性疾患の患者さんの治療継続も意識しておく必要があります。

 

普段から慢性疾患を持つ方の対応にあたる先生は、患者さんと災害時の対応についてしっかりとコミュニケーションをとっておくことが必要です。

 

その際に、PHRを活用すれば既往歴や服薬履歴、過去の健診結果やなども確認できるため、是非、この機会にPHRの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

 

慢性疾患に特化したPHR『シンクヘルス』の詳細はこちら

 

参考資料

厚生労働省ホームページ「災害医療」

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