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INTERVIEW

isCGMと併用することで看護師も食事指導が細やかにできようになる

国立成育医療研究センター
山田未歩子先生

2022.06.13

成育医療センター山田さん写真

東京都世田谷区の国立成育医療研究センターは受精・妊娠に始まり、胎児期、新生児期、乳児期、学童期、思春期を経て次世代を育成する成人期へと至るライフサイクルに生じる疾患(成育疾患)に関する医療と研究を推進しています。
母性内科と小児内分泌代謝科では、妊娠糖尿病・糖尿病合併妊婦患者さんや若年の1型糖尿病患者さんへ自己管理アプリ「シンクヘルス」を取り入れています。
今回は糖尿病看護認定看護師の山田未歩子先生にお話を伺いました。

どのようにシンクヘルスを診療や指導に沿って導入していますか?

まず医師が診察を行います。妊娠糖尿病あるいは初診の糖尿病合併妊婦さんに対して、血糖自己測定の必要性やシンクヘルスで血糖や食事の管理を行う必要性を診察時に説明してくれています。
その後、看護師が血糖測定の方法について説明します。この際に、シンクヘルスも一緒に案内してアプリの登録、測定した血糖値や食事の記録方法を伝えています。
その後自宅で患者さんは血糖測定とともにアプリで記録を行っていきます。

継続指導の際には血糖変動がわかるisCGM (intermittently scanned Continuous Glucose Monitoring)やケアリンクレポートとシンクヘルスを活用しています。まずは血糖変動がわかるレポートを印刷します。
シンクヘルスの食事画面を見ながら、レポートに食事内容を記載していきます。分割食の内容や食べる時間、食事量などを写真を見ながら具体的な提案を行います、療養指導は30分ほど指導をしているので、在宅療養指導料(170点)を算定しています。
その後栄養指導が必要な場合には栄養士に事前に患者の状況を共有し院内で連携を行っておいますが、栄養指導がない場合には、診察前に医師へレポートの内容や療養指導内容を共有することで現状把握ができるように連携しています。

実際に導入をした患者さんへの活用事例を教えてください。

ある糖尿病妊婦さんにisCGMとシンクヘルスを導入した例をご紹介します。
シンクヘルスを導入するまではisCGMのメモに記載されている食品の品目しか把握できず、ある昼の時間帯に起きている血糖上昇の原因がわかりませんでした。
しかしシンクヘルスを併用していただき、食事の記録を写真で残していただくようにしてisCGMのレポートとシンクヘルスの食事記録一覧画面を照らし合わせて突合していくと、昼食の味噌汁にじゃがいもが入っていたことや、煮物の中に根菜が含まれていたことが血糖上昇の原因であることがわかりました。

これまで「スープ」と記載があったメモについても、オニオンスープなのかコーンスープなのかで糖質量が異なりますが、この記載だけではその内容まで把握ができませんでした。しかし写真を見るとコーンスープであったことも私たちが気づくことができるようになりました。

この方は仕事の都合上で昼食の内容を変えることはできないという事情がありました。ご本人なりに健康的な食事となるように玄米を家から持参していること、そして野菜を持参するのでインスリンの導入は避けたいというご希望がありました。
妊娠30週で血糖値が上がりやすいため、インスリン導入の可能性を伝え、インスリンは食事ごとに毎回打つのではなく、食事の管理ができているが血糖値上昇が抑えられないときだけ打つことになりそうとお伝えすると「そうなんですね」と返答がありました。

実際のところ、その日のうちに患者さんはインスリンを導入し、昼食時はインスリンを打つようになり、以降の食後高血糖は改善されるようになりました。妊婦さんはインスリン導入後の血糖状況について「血糖値下がりました!注射は不安でしたが、今は大丈夫そうです」と答えていました。
このように血糖値と食事を同時に「見える化」したことで、妊婦さん本人が自分でできることとその限界について知ることができ、インスリン導入を受け入れることができました。

2つのアプリを連携して自己管理に活用

新しいアプリの機能としてisCGM専用スマートフォンアプリとシンクヘルスが連携できるようになりました。当院では対面指導の際にアプリの連携を患者さんに勧めています。
スマートフォンアプリを用いてスキャンをして、シンクヘルス上で1日の血糖変動と生活の記録を一緒に振り返ることができるので、グルコース値が高いところでは何を食べたのかなど詳細がわかる点がいいと思います。
例えばじゃがいもなど糖質の高い食事をしていた日については、その時間帯のグラフを押すと記録した食事写真と時刻が見えます。血糖変動の山が高くなっている部分について、「やっぱり糖質量が原因だったかな」と患者さん自身で気づくことができるようになります。

療養指導を行う立場として、シンクヘルス導入のメリットはなんですか?

まず、食事内容や量の把握が容易になることです。
また、各種グルコース・ ケアリンクレポートと一緒に説明することで、食事と血糖値の上がり方を見える化できるので療養支援しやすいです。

さらに写真を見ながら指導ができるので、栄養士だけでなく看護師でも具体的な食事の指導ができるという点もありがたいと思います。例えばカーボカウントの導入時は、カーボの見積もりが正しい見立てかどうかの確認が簡単にできるようになりました。

一方で、シンクヘルスを見ながら療養支援をする際には食事を見られることへの配慮が必要だと考えています。
食べたものを正直に記録してもらうためには、食事内容を厳しく指導したり禁止をするものではないと伝えることが重要です。食事と血糖値をみて、患者さんと一緒に食事を評価していくことを大切にしています。
その評価を患者さんに必ずフィードバックしていくことで血糖値や食事写真を療養指導に生かしていくことができると考えています。
さらに注意点として、写真にも写っていない食べ物や飲み物があることにも気を配ることも忘れてはいけません。写真以外にも食べているものがある可能性も意識しています。

シンクヘルスは血糖変動レポートと同じように、療養指導に活用できるツールだと考えています。

施設紹介

国立成育医療研究センター
〒157-8535東京都世田谷区大蔵2-10-1
ウェブサイト:https://www.ncchd.go.jp/

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