インスリン抵抗性とは~高いと糖尿病になる?改善法も解説~

当記事の執筆はライター 松原知香(管理栄養士)が担当しました。
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健康診断の結果で「インスリン抵抗性が高め」や「境界型糖尿病の疑い」と指摘されると、自分は糖尿病になってしまったのかと不安に思いますよね。
そもそも、インスリン抵抗性がどのようなことを表すのか知っている方は、少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、インスリン抵抗性が何を表しているのか、検査方法からインスリン抵抗性が高くなる原因や受診するタイミングについて解説します。
また、インスリン抵抗性を改善につながる食事や運動についてもお伝えするので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
インスリン抵抗性とは
インスリン抵抗性とは、血糖値を下げる働きのインスリンというホルモンが効きにくい状態を表しています。
私たちは食べ物を摂取すると、消化管内で分解した後、体内に吸収します。その後、吸収された栄養素のなかの糖が血中へと移動し、血糖値が上がるのです。
すると、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌され、血中に増えた糖を肝臓や筋肉などの貯蔵組織にしまい血糖値を正常域に下げます。
インスリン抵抗性の高い方はインスリンが効きにくいため、血糖値を正常にするために、通常よりも多くのインスリン分泌が必要となります。
そのような状態を放置し続けると、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が疲弊してしまい、インスリンが十分に分泌されなくなります。すると、血糖値が下がらず高いままとなり、糖尿病の発症リスクが増加するのです。
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インスリン抵抗性の検査方法

インスリン抵抗性の評価には、
・HOMA-IR
という数値を用います。
空腹時血中インスリン値では、早朝空腹時血中インスリン値が15μU/mg以上だった場合、明らかなインスリン抵抗性があると判断されます。
一方、HOMA-IRの算出方法は以下の通りです。
HOMA-IR=空腹時インスリン値(μU/mg)×空腹時血糖値(mg/dL)/405
正常な場合は1.6以下ですが、2.5以上の場合はインスリンの効きが悪い(=インスリン抵抗性が高い)と判断されます。
インスリン抵抗性が高くなる原因

インスリン抵抗性が高くなるのは、いくつかの原因があります。
・過食
・運動不足
・遺伝因子
・加齢
それでは、それぞれインスリン抵抗性とどのように関わっているのかご説明しましょう。
肥満
インスリン抵抗性に大きく影響を与えているのは肥満です。
肥満の方は血中の遊離脂肪酸が多く、糖の貯蔵組織である肝臓や筋肉組織へ付きやすい状態にあります。すると、貯蔵組織へ糖をしまいにくくなりインスリンがその効果を十分発揮できず、インスリン抵抗性につながるのです。
過食

過食によって常に栄養を摂り過ぎた状態が続くと、肥満につながります。とくに、揚げ物などの高脂肪食はエネルギーが高くなる傾向にあり、エネルギー過多に陥りやすいです。
そのため、過食も肥満と並びインスリン抵抗性に大きな影響を与える原因の一つといえます。
運動不足
運動不足は肥満だけでなく、筋肉量の低下にもつながります。筋肉量が低下すると、糖を貯蔵する筋肉組織が減ってしまいます。また、運動不足で骨格筋自体に脂肪が沈着すると、インスリン感受性(※)が低下し、インスリン抵抗性につながるのです。
(※)インスリン感受性とは、インスリンに対する筋肉や肝臓など糖を貯蔵する臓器の反応性のこと。
遺伝因子
インスリン抵抗性はもちろん糖尿病にもいえることですが、これらは遺伝因子による影響を受けます。
両親のどちらかが糖尿病、もしくはインスリン抵抗性の高い状態だった場合、その子も同じ健康状態となる可能性が高いのです。
ただし、遺伝因子だけでインスリン抵抗性があらわれるのではなく、家族では生活パターンが似ていることが多いため、肥満や過食、運動不足といったその他の要因と絡み合っているケースが多くみられます。
加齢
加齢による体組織の構成の変化が、インスリン抵抗性につながっていると考えられています。
加齢によって筋肉量の低下と、それに伴う相対的な脂肪組織の増加がみられ、肥満や運動不足と同様のメカニズムでインスリン抵抗性が高まるとされています。
インスリン抵抗性が高いと糖尿病と診断されるのか

インスリン抵抗性はあくまでもインスリンが正常に働いているかを表しているため、インスリン抵抗性が高いからといって必ずしも糖尿病であると断定はできません。
ただし、インスリン抵抗性の高い状態は「境界型糖尿病(または糖尿病予備軍)」に至っているケースもあり、その状態を放置し続けた場合、糖尿病を発症する可能性があります。
もしも、健康診断で「インスリン抵抗性が高め」や肥満、高血圧といった点で指摘されたら、一度病院を受診し医師に相談するとよいでしょう。
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1型、2型、妊娠糖尿病について
糖尿病は1型、2型、妊娠糖尿病に分けられます。そして、これらのなかでもインスリン抵抗性と関係があるのは2型糖尿病、妊娠糖尿病です。
1型糖尿病:自己免疫により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなり血糖値を正常に下げられない状態。
2型糖尿病:肥満や過食、運動不足などの生活習慣の乱れや遺伝要因によって、インスリンが実質的、相対的に不足する状態が続き発症する。
妊娠糖尿病:妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常のこと。
それぞれの病態や診断基準について気になる方はこちら↓
【医師監修】1型糖尿病とは〜原因・症状から治療と生活の注意点をわかりやすく解説〜
【医師監修】2型糖尿病とは〜原因・症状や治療についてわかりやすく解説〜
【医師監修】妊娠糖尿病とは〜原因・治療・食事までシンプルに解説〜
やせ型でもインスリン抵抗性が高いことも
さきほど、インスリン抵抗性が高まる原因の一つに肥満を挙げましたが、じつはやせ型であってもインスリン抵抗性が高いこともあるのです。
国内の研究報告によって、やせ型(BMI<18.5kg/m²)の女性は標準体重(BMI18.5-23.0kg/m²)の女性よりも、食後高血糖など耐糖能異常の割合が高く、その原因にインスリン抵抗性が関与していると明らかになりました。(※)
(※) Prevalence and features of impaired glucose tolerance in young underweight Japanese
なぜ痩せていてもインスリン抵抗性があらわれるのか、そのメカニズムについて詳細はまだわかっておらず、今後の研究報告が期待されます。
痩せているからインスリン抵抗性や糖尿病とは無縁と思いこまず、年に1回必ず健康診断を受けて自分の健康状態をチェックしましょう。
インスリン抵抗性の改善方法とは
インスリン抵抗性の高い状態を放置すると糖尿病の発症リスクを高めますが、食事や運動によってインスリン抵抗性は改善が見込めます。
それぞれについてご説明しましょう。
食事編

インスリン抵抗性を改善するためには、日々の食事内容と食べる時間が関係します。
まず食事内容は、バランスが取れておりエネルギー過多にならないものが理想的です。具体的には、脂質を控えめにして腹持ちのよい食物繊維を積極的に摂取し、エネルギーの摂りすぎと食べ過ぎ防止を図ります。どうしても間食がしたくなったら、スナック菓子などではなく果物などを適量摂るよう意識します。
また、食べる時間にも注意が必要で、とくに気を付けたいのは夕食以降です。
夕食の時間が遅くなったり、エネルギー量の多い夜食を食べたりすると、インスリン抵抗性につながってしまいます。
夕食の時間が遅くなってしまう方は、夕方にご飯などの炭水化物を摂取し、夕食時は肉や魚、野菜類などを中心に摂るとよいでしょう。
また、夜食はエネルギー量を抑えるために油などエネルギーの高い食材を使ったメニューは避け、寝る際の胃腸に負担がかからないよう消化しやすいものを選ぶとよいです。
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運動編

運動により筋肉が、肝臓や筋肉への糖の貯蔵を妨げる遊離脂肪酸の利用を促進します。そのため、継続的に運動することで、インスリン抵抗性の改善が期待できるのです。
運動内容は、ジョギングなどの有酸素運動と筋トレなど筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動を組み合わせるとよいです。
有酸素運動については、「ややきつい」と自覚するような強度で行います。
そして、効率的な糖・脂肪酸代謝の観点から、運動はできれば20分程以上継続が望ましいです。
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その他
睡眠不足によってインスリン抵抗性が高まるという研究報告もあるため、十分な睡眠時間の確保はインスリン抵抗性の改善につながると考えられます。
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まとめ
インスリン抵抗性とは、食後に上がった血糖値を下げるインスリンが効きにくい状態を表しており、インスリン抵抗性を表す指標は以下の通りです。
・HOMAーIR:2.5以上
インスリン抵抗性が高いからといって、必ずしも糖尿病であるとはいえないものの、長期間放置してしまうと2型糖尿病の発症リスクを高めるため、食事や運動などの生活習慣の改善が必要です。
家族に糖尿病の方がいて血糖値が高めといわれている方は、一度医師に相談して糖尿病に進行しないよう早めに対策をとりましょう。
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参考文献
糖尿病治療ガイドライン2024 1 章 糖尿病診断の指針
Sato M, Tamura Y, Nakagata T, Someya Y, Kaga H, Yamasaki N, Kiya M, Kadowaki S, Sugimoto D, Satoh H, Kawamori R, Watada H. Prevalence and Features of Impaired Glucose Tolerance in Young Underweight Japanese Women. J Clin Endocrinol Metab. 2021 Apr 23;106(5):e2053-e2062. doi: 10.1210/clinem/dgab052. PMID: 33512496.
加齢に伴う糖代謝変化
2.時間栄養学を応用した糖尿病の食事療法
厚生労働省 健康づくりサポートネット 糖尿病を改善するための運動 睡眠と生活習慣病との深い関係



