トランス脂肪酸を含む食品はなぜ体に悪い?摂りすぎを防ぐコツも紹介

当記事の執筆は、管理栄養士 松原知香が担当しました。
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「トランス脂肪酸は体に悪い」
このような情報を耳にしたことはありますか。
テレビやSNSでも度々話題となっているトランス脂肪酸。
日本では規制されていないため、トランス脂肪酸を含む食品が多く出回っていると噂されることもあります。
そこで今回は、トランス脂肪酸を含む食品がなぜ体に悪いといわれるのか、理由から海外と日本での対応の違いまで、あなたの疑問を解決する情報についてお伝えします。
また、トランス脂肪酸を多く含む食品の一覧から摂りすぎないためのコツなど、賢く付き合う方法をわかりやすく解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
トランス脂肪酸とは?
そもそもトランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種です。
脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類があり、それぞれの特徴は以下のとおりです。
不飽和脂肪酸:体温で液体状に存在する。
不飽和脂肪酸は通常液体ですが、水素添加という加工技術を用いると固形または半固形に形状変化できます。その際、飽和脂肪酸と同時にトランス脂肪酸も生成されるのです。
トランス脂肪酸は天然に存在するものもありますが、ほとんどが水素添加のように人工的に作られたもので、身近な代表例はマーガリンです。
また、植物油や魚油の気になる匂いを取り除くため高温で加熱処理する際にも、トランス脂肪酸は発生します。
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トランス脂肪酸が体に与える影響

トランス脂肪酸の摂取は、塩分の摂りすぎや過体重、アルコールの摂りすぎと並んで、命に関わる病気の発症リスクになるといわれています。
心疾患のリスクが上昇する
トランス脂肪酸の摂りすぎは、心血管疾患のなかでもとくに冠動脈心疾患(心筋梗塞など)のリスクを高めるという報告があります。
その理由として、トランス脂肪酸は動脈硬化を促進するLDLコレステロールの増加だけでなく、HDLコレステロールを減少させるからです。
HDLコレステロールは、血管内に付着したコレステロールを肝臓へ送り、動脈硬化を防ぐ働きがあります。そのため、HDLコレステロールの減少とLDLコレステロールの増加がみられると動脈硬化が起きやすく、血管内壁にアテローム(脂肪の塊)ができやすくなります。その結果、心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクが高まるのです。
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海外では規制や上限量がある

海外では健康に害があるとして、トランス脂肪酸に対する規制や摂取量の上限を設けています。
WHO(世界保健機関)は、2003年にトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー量の1%より少なくすることを目標に掲げています。
さらに2023年には加工によるトランス脂肪酸の低減を世界各国に提言しており、トランス脂肪酸への規制を設ける国は年々増加しているのです。
日本では、含有量などに関する具体的な規制は設けていないものの、食品安全委員会が独自に定量を行い発表するなど、トランス脂肪酸への意識は高まっています。
一方で、規制は設けても禁止をしている国はなく、トランス脂肪酸を生成しない加工技術への置き換えによって、食品中のトランス脂肪酸を減らす努力が続けられています。
トランス脂肪酸を多く含む食品を一覧で紹介
トランス脂肪酸を摂りすぎないためには、どのような食品に含まれているのか知ることが大事です。日常的に食べているものを、一覧でご紹介しましょう。
| 分類 | 品目 | 食品100g中のトランス脂肪酸含有量 (中央値) |
| 油脂類 | マーガリン | 0.65g |
| 植物性油脂 | 0.64g | |
| ファットスプレッド | 0.61g | |
| ショートニング | 0.48g | |
| 菓子類 | 米菓 | 0.25g |
| 菓子パイ | 0.20g | |
| ビスケット(クッキー含む) | 0.18g | |
| チョコレート | 0.18g | |
| ドーナツ | 0.16g | |
| パン・麺類 | クロワッサン | 0.20g |
| 調理パン・総菜パン | 0.10g | |
| 即席めん | 0.10g | |
| 菓子パン | 0.08g | |
| ロールパン | 0.05g | |
| 調味料 | ルウ(カレー、ハヤシ、シチュー) | 0.46g |
| マヨネーズ・サラダドレッシング(マヨネーズタイプ) | 0.39g | |
| 上記以外のドレッシング | 0.38g |
※農林水産省 令和4・5年度調査結果 から一部抜粋
マーガリンなどの油脂類

トランス脂肪酸が多く含まれているものは、おもにマーガリンなどの油脂類です。
冒頭でもお伝えしましたが、トランス脂肪酸は液体の油から固形の脂を作る際に生成されます。
そのため、マーガリンやショートニング、ファットスプレッド(簡単に塗れるようマーガリンよりもやわらかいもの)など、人工的に作られた固形油脂にトランス脂肪酸が多く含まれているのです。
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お菓子・加工パンにも含まれる

日常生活で、トランス脂肪酸を多く含むマーガリンやショートニングをそのまま食べる機会は多くありません。むしろ、それらを使ったお菓子や加工パンが、トランス脂肪酸の摂取源なのです。
クッキーやビスケットなどは、食感を良くするためにショートニングを使う傾向にあります。また、ショートニングは無味無臭のため使いやすく、さまざまな加工食品に使われています。
日本人はトランス脂肪酸を摂りすぎている?
じつは、日本は諸外国に比べて脂質の摂取量が少ない傾向にあるため、同時にトランス脂肪酸の摂取量も少ないのです。
さらに日々の企業努力で、トランス脂肪酸を生成しない加工技術の開発・導入が進められ、より摂取量の低減が実現できています。
実際に日本人のトランス脂肪酸の摂取量は、WHOが提言している「総エネルギー量の1%より少なく」を大幅に下回り、平均総エネルギー量の0.3%と推定されています(※)。そのため、脂肪分の多い食事を摂りすぎていなければ、そこまでトランス脂肪酸に対して怖がる必要はないといえるでしょう。
(※)内閣府食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価について」
とはいえ、脂質の摂りすぎはすぐに気づけるものではなく、記録を残し食事の内容を見える化することで初めて気づく場合もあります。
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脂質の過剰摂取を防ぐことが大事

上記のことからも、脂質の摂りすぎを防ぐことがトランス脂肪酸の摂りすぎによる健康被害を避けるために重要といえます。
またトランス脂肪酸の健康被害は塩分の摂りすぎや過体重、アルコールの摂りすぎと並ぶことから、トランス脂肪酸の量だけでなく、塩分やアルコール、体重にも気をつける必要があります。
塩分は、現在の推奨量は男性7.5g、女性6.5gですが、現状はそれよりも男女ともに上回っているため、日々の減塩を心がけましょう。
アルコールの摂りすぎも、あらかじめ飲む量を決めたり、飲んだ量を記録するとよいですよ。
さらに、体重管理は食事とともに適度な運動も必要です。家でできる筋トレやストレッチでもよいので、毎日続けられるものに取り組みましょう。
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まとめ
トランス脂肪酸は液体の油を固形の脂へ加工製造する際にできることが多く、マーガリンやショートニング、さらにそれらを使った加工食品に多く含まれています。
トランス脂肪酸の摂りすぎは心筋梗塞など冠動脈心疾患のリスクを高めるため、海外の国々ではトランス脂肪酸の含有量に規制をかけたり、摂取量の上限を設けたりしています。
一方、日本ではとくに規制を設けてはいません。その理由は、日本人は諸外国に比べて脂質の摂取量が少なく、同時にトランス脂肪酸の摂取量が少ないからです。
そのため、脂質の摂りすぎを防ぐ食事を意識すれば、トランス脂肪酸の摂りすぎも防げます。食事の管理が大変と感じる方は、便利なアプリの機能もあるので一度検討してみてはいかがでしょうか?
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参考文献
農林水産省 すぐにわかるトランス脂肪酸:農林水産省 トランス脂肪酸の摂取と健康への影響 トランス脂肪酸に関する各国・地域の規制状況
農林水産省 令和4・5年度調査結果(穀類加工品、油脂類、菓子類、調味料・香辛料類)
内閣府食品安全委員会 第1回 トランス脂肪酸〜リスク評価の意味を知ってほしい〜
日本マーガリン工業会 今どきの トランス脂肪酸の話し



