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糖尿病性腎症とは〜検査・治療・予防を分かりやすく解説〜

糖尿病腎症とは

※当記事は赤羽もり内科 腎臓内科 院長、森維久郎先生に監修をいただきました。

「糖尿病の合併症で透析になることがあるって言われたけど、本当なの?」

糖尿病が進行すると、全身のすみずみで合併症が起こります。そして腎臓が悪くなるのが糖尿病性腎症で、機能が失われると人工透析が必要になってしまうのです。

「腎臓のことも合併症のこともよく分からない」

そんなあなたに、糖尿病と腎臓の関係や糖尿病性腎症の検査・治療・予防について、本記事でわかりやすく説明していきますね。

 

 

糖尿病性腎症とはどのような病気? 

糖尿病性腎症とは、『糖尿病が原因で腎臓の機能が低下すること』です。糖尿病の三大合併症の1つで、糖尿病になってすぐに起こるのではなく、長い間高血糖が続くことで発症します。最初のうちは自覚症状がないことが多いです。

原因について

腎臓のダメージ_ 糖尿病腎症

腎臓には、血液をろ過することで老廃物や余分な水分を取り除いて尿として体の外に排出したり、塩分を調節したりする働きがあります。

腎臓のろ過機能の中心となっているのは、毛細血管が糸玉状に集まった糸球体と呼ばれる部分です。糸球体は1つの腎臓に100万個存在すると言われています。

糖尿病性腎症になると、高血糖が続くことにより糸球体の毛細血管がダメージを受け破れたり詰まったり、機能や構造に異常が起こるのです。その結果、老廃物や余分な水分を取り除き尿として排出してくれる糸球体の働きが弱くなることで、体がむくんだり気分が悪くなったりすることがあります。

意外にも血圧との関係あり

高血圧は、糖尿病性腎症の発症や進行に関係があると言われています。

糖尿病性腎症の治療は、血糖コントロール・血圧コントロール・食事療法が三本柱と言われているくらい血圧と糖尿病性腎症の関係は深いです。

糖尿病性腎症と診断された場合、血圧の目標値は130/80mmHg未満です。血圧のコントロールがしっかりできることで、糖尿病性腎症の悪化を防ぐこともできると言われています。

参考記事:糖尿病と高血圧の関連性~症状と対策をわかりやすく解説~

何科に行けば良い?

糖尿病性腎症は初期の自覚症状がないことが多いので、糖尿病の合併症検査で見つかることも少なくありません。もし何か不安なことがある場合は、まずは糖尿病でお世話になっている先生に相談してみるのが良いでしょう。

透析などの治療が必要になった場合は、腎臓内科の先生が診てくれることが多いと思いますが、どこを受診すれば良いのかを含めて糖尿病の主治医の先生に相談すると、色々と教えてくれると思いますよ。

どのような検査が行われるのか 

どのような検査が行われるのか 

糖尿病性腎症の検査は主に、尿検査と血液検査です。尿検査では、尿アルブミン値もしくは尿たんぱく値、血液検査ではGFRという項目で糖尿病性腎症がどのくらい進行しているのかを判断します。

そして、糖尿病性腎症の病期は5つです。それぞれどのくらいの検査結果でどこの病期になるのか、下記にお示ししますね。

腎症のステージと検査数値

また、糖尿病性腎症と診断する際の参考とされている項目が下記になります。

①糖尿病と診断されて治療を始めてから5年以上経過している
②網膜症や神経障害などの他の糖尿病合併症が存在する
③中等度以上の血尿が存在しない

病期毎の症状や治療を紹介

糖尿病性腎症の症状としては、むくみ・貧血・倦怠感がありますが、これらの症状は第3期以降まで進行しないと起こらないことが多いです。

つまり、第1期・第2期では自分で感じる症状は何もないことが多いのです。ただし、血圧の上昇は第2期頃から起こることがあります。

また、糖尿病性腎症ではネフローゼ症候群を合併することも多く、徐々に腎臓の機能が低下したり、腎不全になることもあるのです。

糖尿病性腎症の治療は、血糖コントロール・血圧コントロール・食事療法の三本柱と、病期によっては運動療法を行います。病期毎の治療については、下記にまとめておきますね。

糖尿病腎症のステージごとの治療まとめ

食事療法について

糖尿病腎症の食事

糖尿病性腎症の基本的な治療である食事療法は、病期によって異なります。そのため自分がどのくらいの食事療法をしなくてはいけないのか、主治医に確認が必要です。
本記事では、食事療法の基本的な部分についてお伝えしていきます。

腎臓を守る食事

腎臓を守るために、食べる量が制限される食事があるので代表例を紹介します。
糖尿病腎症ステージ毎の食事注意点

腎臓病食品交換表とは

腎臓に病気を持つ人の栄養管理を行うために使うのが、腎臓病食品交換表です。

腎臓病食品交換表は、主治医から指示されたタンパク質・塩分・カロリー・水分などの制限量に合わせた食事のメニューを考えたり、実際に食べた食事の栄養を計算したりするときに活用されます。

複雑な条件でも食事療法ができるように工夫されており、何をどのくらい食べたら良いのか分かりやすいのが特徴です。そのため、管理栄養士から栄養指導を受けるときに用いられることも多いです。

「腎臓病食品交換表」はこちらを参照

腎不全や透析にならないために予防が大切

透析にならないために

腎不全になると透析や腎移植が必要になることがあります。腎移植は海外と比較すると日本では非常に少ないと言われていますし、移植をした後は免疫を抑制する薬を飲み続けなければいけなくなります。

透析に関しても、週3回病院に通ったり(血液透析)、1日4回自分や家族が透析液を交換したり(腹膜透析)、今までと同じように自由な生活を送ることは難しいです。そうならないためにも、予防が大切です。

血糖コントロールの不良・高血圧・脂質異常・喫煙は糖尿病性腎症の発症や進行と関係があると言われています。

生活習慣に気を付けて、血糖コントロールをしっかり行うことが糖尿病性腎症の予防に繋がります。糖尿病性腎症の予防は、将来的に腎不全や透析にならないために大切なのです。

まとめ

それでは本日のまとめです。

◎糖尿病性腎症とは、糖尿病の影響で腎臓の機能が低下すること
◎検査では、尿検査・血液検査が行われる
◎症状はむくみ・貧血・倦怠感だが、初期症状はないことが多い
◎治療は、血糖コントロール・血圧コントロール・食事療法と運動療法
◎腎臓を守るために、食塩・タンパク質・カリウム・リン・水分は制限されることも
◎腎不全や透析を避けるためにも、糖尿病性腎症の予防は大切


あなたが透析などで大変な思いをしなくて済むように、本記事が少しでも役に立つと嬉しいです。

なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。運動や血圧なども記録できますので、ぜひ活用してみてくださいね。

 

参考・引用文献
医療情報科学研究所(2019):病気がみえるvol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第5版,メディックメディア,90-95
医療情報科学研究所(2018):病気がみえるvol.8 腎・泌尿器 第2版,メディックメディア,223
国立国際医療研究センター糖尿病情報センター(2020):腎症,(検索日:2021年1月27日)
公益財団法人長寿科学振興財団(2019):健康長寿ネット 糖尿病性腎症,(検索日:2021年1月27日)

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